なぜ精神科医がダイエット注射を使うのか

──答えは「痩せる前に、整う」
精神科医がマンジャロを使う理由は、「うつ病を治す薬だから」ではありません。
今の医学では、マンジャロ(チルゼパチド)やGLP-1受容体作動薬が、うつ病や不安障害を直接治すという証拠はありません。
一方で、大規模な臨床試験やメタアナリシスでは、これらの薬を使っても、うつ、希死念慮、不安、不眠などの精神症状が悪化するリスクは増えないことが確認されています。
つまり「心に悪い薬ではない」という点は、はっきりしています。

この薬の本当の役割は、血糖値と食欲を安定させることです。
血糖値が乱れると、体はアドレナリンを出して無理やり頑張ろうとするため、イライラしたり、不安になったり、眠りが浅くなります。
忙しい生活、不規則な食事、会食やお酒が多い毎日では、男女問わず血糖は簡単に乱れます。
マンジャロで血糖と食欲が落ち着くと、強い空腹に振り回されにくくなり、衝動的に食べたり飲んだりすることが減り、結果として気分が安定し、睡眠の質が上がり、集中力や見た目の印象まで変わってきます。

当院には美容目的の女性だけでなく、経営者や管理職などのビジネスパーソンも多く通われていますが、「痩せた」より先に「最近調子いいですね」「雰囲気が良くなりましたね」と言われる方が多いのが特徴です。
私はこの治療を、うつ病や不安障害の治療として使っているわけではありません。
エビデンスを正しく踏まえたうえで、体重や血糖を整えることで生活の土台を安定させ、結果として仕事や美容のパフォーマンスを落とさないための医療として提案しています。
週1回の注射で、無理な食事制限や根性論に頼らず、忙しい毎日でも続けやすい。
それが、今この治療を選ぶ人が増えている理由です

そして体重については、ここははっきり言ってもよいと思います。
マンジャロ(チルゼパチド)による体重減少効果については、現在では大規模臨床試験とメタアナリシスのデータがかなり揃っており、「多くの人で体重は実際に減る」と言って差し支えない段階に入っています。
だからこそ私は、気分や生活の土台を整えながら、結果として無理なく体重も落としていく医療として、この治療を提案しています。

【参考文献】
[1] Pierret ACS et al. JAMA Psychiatry 2025
[2] Li S et al. Eur Neuropsychopharmacol 2025
[3] Chen X et al. Am J Geriatr Psychiatry 2024
[4] Pozzi M et al. J Affect Disord 2019
[5] Opel N et al. Lancet Psychiatry 2025
[6] Kornelius E et al. Scientific Reports 2024
[7] Tang H et al. Annals of Internal Medicine 2025